ファミコン中毒とジュース中毒

深刻な中高生の無気力症(アパシー)
中学生や高校生の間で、無気力な子どもが増えていることはよく知られています。登校拒否は、学校に行けなくなってしまうので事態は深刻なのですが、学校へ行けなくなるほどではない、無気力な子どもが多いのです。ずっと以前に「落ちこぼれ」という言葉が登場しましたが、「落ちこぼれ」とは勉強について行けなくなり、授業で疎外された存在になった子どものことです。それから何年かたって、今や学校では、落ちこぼれよりも深刻な「無気力状態」の子どもが増えているのです。無気力状態のことを我々は、アパシ!と呼んでいます。アパシーは、もう三O年も前に、ステューデント・アパシーとして、大学生の中で登場し、「五月病」とも呼ばれました。これは入学したり進級したりして、少し慣れた五月ごろから発生することが多かったせいです。最初は大学生の病気であったものが、少しずつ高校生の中でも発生するようになり、今や中学生の中にも広がっているのです。アパシーは軽いものから重いものまでありますが、典型例においては、朝起きられないこと、生き生きした会話が減っていいかげんな返事が多くなること、生活全体がルーズになること、勉強にまったく向き合えなくなること、外に出ることを嫌がること、努力を要することを避けること、などの特徴があります。
このようなアパシーの子ども達が唯一熱中するのがテレビゲームなのです。たとえば学校に行かず、お昼頃に起きてすグーテレビゲ|ムに向かい、それから食事以外は深夜までやっていることもあります。はたから見ていると、目、が悪くなることより、頭がおかしくなるのではないかと心配になるくらいなのです。親が心配してゲーム機をとりあげたりすると、親に暴力をふるって取り返すようなこともよくあります。彼らは、テレビゲームをやるか、ぼんやりとテレビを見るかで一日を過ごすことが多く、ひどい時には、マンガも見なくなることがあります。テレビやテレビゲームよりも、マンガのほうがより能動的な意志が必要といえるのかもしれません。

ファミコン中毒
こうした「ファミコン中毒」ともいえる現象は、アパシーの子どもによく見られますが、登校拒否の子どもにおいても見られます。そればかりではなく、今の子どもはどの子もファミコン中毒になる可能性を持っているともいえます。たとえば、進学塾に通っていて、夜遅くまで塾で勉強して家に帰ってきた子が、夜寝る前に必ずテレビゲ|ムを三O分しないと眠れない、というような諦はよく聞くことです。こうした現象は小学生から大人まで幅広く見られています。
私はファミコン中毒という言葉を使いました。これはある種の強迫行動であると考えるからです。別の言葉でいえば一種の噌癖といえます。これはやめようと思ってもやめられない、クセから抜けられない、止められても止まらない状態のことを指しています。昔からギャンブル狂という言葉、がありますが、最近では仕事中毒という言葉もはやっています。アルコール依存ということも実はこの噌癖の一種なのです。ファミコン中毒とアルコール依存も紙一重の違いなのです。
たとえば先程あげた、酒代のためにファミコンソフトを売ってお金を捻出した子どもも、友達と酒を飲むためだけに会っていた高校生も、ファミコン中毒でした。つまりファミコンにのめり込む心理とアルコールにのめり込む心理は、ほとんど同じといってよいからです。これは、現代の大量消費文化が作り上げた一つの子ども像なのです。受け身的な心でいながらそれでも手に入る快楽がテレビゲームであり、アルコールなのです。現実の中で生き、喜びを見いだすことは、一方では自分の思い通りにならないこともあり、苦痛に耐えることも必要ですが、テレビゲ|ムとアルコールの酔いの中では、自分がヒーローやヒロインになって、自分が世界の中心になることはいとも簡単なことです。あるいはそんな子ども達を見ていると、現実というものが途方もなく巨大で困難な妖怪のように見えていて、ひたすらそれから逃れるために、ファミコンやアルコールに走っているのだと思います。私の勤務する病院は、神奈川県のはずれの三浦半島にあり、山と海のそばに建っています。そんなところで仕事をしていると、東京に出たり大学病院に行ったりすると、周囲が巨大な妖怪のように見えて恐怖心で逃げ帰りたくなることがあり、そんな時に子ども達の恐怖感はこんなものなのかと振り返ったりします。つまり現代の都市文明は、一方では限りなく便利で能率的でありながら、一歩踏みはずすと、それが巨大な恐怖と化してしまうということなのでしょう。

ペットボトル症候群
またこのことと関連して、今の子ども達に、ジュース中毒ともいえる現象がはやっています。これもアルコール依存と紙一重の現象です。ある中学校の先生から聞いた話ですが、修学旅行に行くと、ジュースとかコーラのベットボトルを離さない子がいて、パスを降りて何かの見学をする時も、ベットボトルを肌身離さず持って歩く子どもがいるということです。もちろんそれは、修学旅行にある種の解放感があるということと関連していると考えられます。しかし確かに今の子ども達は、ジュースやコーラやさまざまな炭酸飲料をよく飲みます。私の病棟に入院している思春期・青年期の人達を見ると、いつもカンジュースを飲んでいてご飯を残しています。一緒にハイキングーに行っても、景色を見るより自動販売機に何かを買いに行くありさまです。
ある時おもしろいことがありました。病院では夏、入院している若い患者をつれてキャンプに行くのですが、出かける朝に一人の若い男の子が、ひどく大きくて重そうな荷物を提げてやってきました。パスから降りてしはらく谷間の道を歩いてキャンプ場に行くのですが、その荷物はひどく重そうで、彼は汗を拭き拭き歩いていました。キャンプのための食料やらナベカマなどは、みんなで持って行くのですが、彼はその荷物の分担も断るほど荷物は重かったのです。みんなが興味を持って彼に中身は何なのかと聞きましたが、彼は決して答えようとはしませんでした。それからキャンプも無事終わり、帰る時になると、みんなは荷物が軽くなっていたのですが、彼だけは行きと同じように大きな重い荷物を担いで帰りました。そして病院に着いた時、彼はしぶしぶ荷物の中を見せてくれました。何と一・五リットルのベットボトルが三本も入っていたのでした。これは重いはずです。なぜそのベットボトルがそのまま残っていたかというと、みんなが共同で持った荷物の中に、キャンプで飲むジュース類がたくさん入っていて彼もそれを飲んだので、自分が持って行ったものは飲む必要がなかったのです。彼にはそれほどペットボトルが大切だったようです。
今、小児科領域ではペットボトル症候群という病気があるそうです。子どもがベットボトルのジュース類を飲み過ぎて、急性の糖尿病にかかるケースがあるのだそうです。多くは入院してインシュリンの治療をすると跡形もなく直るそうですが、中には血糖値が高くなりすぎて下がらず、死亡するケースもあると聞いています。
ジュース中毒というのは、いつも何かを口にしていなければ落ち着かない状態です。さらにジュースばかりを飲んでいると、身体のホメオスタシスが狂い、脱水状態のようになってよけいにのどが渇くようになるという悪循環もあります。
みなさんはもうおわかりと思いますが、ジュース中毒とアルコール依存は紙一重です。ジュース中毒に近い子どもはたくさんいます。その子ども達がアルコールを口にすれば、伺か口にしているという満足感と、アルコールによる酔いという快感と二重の快楽を得ることができるのです。それにしても現代のこの過保護の世の中において、子ども達は何の愛情に飢えているのでしょうか。

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