青年期の膨張

モラトリアム期
子どもの飲酒の増加については、青年期の問題をぬきにしては語れません。しかも青年期が膨張・拡大していることが大きな問題となっています。青年期が膨張・拡大していることで、大人と子どもの境界が一層不鮮明になっています。
ここでは、思春期と青年期を一括して青年期と呼ぶことにします。思春期とは一般的な医学用語で、第二時性徴出現(男の子の精通と女の子の初潮)から骨端線の閉鎖(身長の伸びが止まる)支でをいいます。青年期とは精神医学的用語で、第二時性徴出現直前の一番身長が伸びる時期の前青年期(一01一二才)から青年期前期(中学時代)・中期(高校時代了後期(高校卒業以降)を経て二O代の後青年期までの長い期聞を指します。しかし社会的な感覚としては、青年期U青春と考えられています。私がここでいう青年期の膨張・拡大とは、青年期が年齢的な幅を拡大しつつあること、人生における位置が昔と比較して大きくなっていることを指します。
青年期とは、性的な目覚めと共に、自意識が出現し、親からの心理的・社会的自立を目指し、社会的な自己形成を行っていく時期です。この時期は性衝動の高まりにもだえ、自意識の出現と共に、罪悪感や嫉妬や怒りの感情が強く出現し、また愛情や信頼感などの感情や、芸術への感動などがごちゃ混ぜに出現して来ます。また親への依存と反嬢という両極端の感情が出現して反抗期を形作ります。こうした混沌とした過程から自己形成がなされ、自己同一性Hアイデンティティが形成されるのです。そしてこの混沌とした時期に対して、社会はその聞の責任を一定程度猶予する(モラトリアム)しきたりを持っています。これはどの文化にも共通することです。

延々と続く青春
さて青年期はいつ終わりになるのでしょうか。これは、今までは結婚が青春の終わりを告げる鐘の役割であると考えられ、あるいは二O才になることが大人になることとも考えられていました。結婚は性的にも一対一の男女の関係を完成させ石ことでしたし、社会的にも一人前になることを意味していました。人は結婚することで大人になるのでした。
しかし最近その様相は大きく変化しています。一つには、先進国における結婚年齢の上昇にあります。日本でも男女ともに結婚平均年齢は上昇し、今や三O代後半になっています。これはもっぱら大学進学率の上昇と共に、青年が経済的に自立する年齢が上昇していること、学生という典型的なモラトリアムの世代が増加しつつあること、シングールライフ志向の結婚を選択しない男女が増加しつつあることが原因です。こうして、青年期を終わらない若者がどんどん増加しています。シングール志向の人に聞けば、たとえその人が三O才を過ぎていても、「私はまだ青年です」と答えます。また結婚していても子どものない夫婦に聞けば「私達はまだ青年です」と答えて平気な時代になっています。私が若かった頃は、青春とは学生時代で終わるのであって、社会に出て働くようになれば大人になるのだと考えていました。ですから青春はアッという聞に過ぎるものでした。しかし今は青春は延々と続くものになっています。
青年期が膨張していると私が述べることの中に、青年期の開始が早くなっていることも含まれます。日本人の栄養状態の向上と文化の変化によって子ども達の第二次性徴の開始はどんどん甲くなってきました。女の子の生理開始の平均年齢は二一才になっていますし、男の子の精通開始の平均年齢も一三才にまで下がっています。このことは青年期の開始を早めている原因の一つです。それでも一O年前までは、反抗期の出現は中学生になってからでした。小学校までは、生理が始まっている子もそうでない子と同じように、子どもらしいふるまいをしていました。しかし、最近では、小学校で反抗期が始まる子どもが目立って増えています。

混沌が支配する時代
小学校で反抗期が始まることは、けつこう大変なことです。なぜなら、家庭でも学校でも小学生は子ども扱いを基本としていますから、反抗期が始まると本人もまわりも収拾がつかなくなります。小学校の五t六年生で、クラスの中に数人の反抗期の子どもがいて、先生に反抗するために授業が成立しなくなった、という話をあちこちから聞いています。また私の外来に、小学校の高学年で登校拒否になって相談に来るケースの多くは、急激な自意識の出現のために、子ども自身が混乱して収拾がつかなくなっていることが多いのです。
反抗期の開始の早まりは、青年期の開始の早まりを意味しています。これは、実は大きな問題を投げかけています。青年期が子ども時代を圧迫し始めていると考えられるからです。子ども時代の遊びを中心とした生活や、遊びを中心とした子ども同土の関係を十分経験することなく青年期が訪れることは、青年期を困難にしている原因の一つです。
青年期の膨張は奇妙な現象も引き起こしています。今の子どもは大人と文化を共有していますし、昔の子どもと比較してはるかにませています。しかし精神的自立と社会的自立については、昔の子どもと比較してはるかに遅れるようになったのです。学校の先生達によると、昔は中学校卒業の時が精神的自立の時であったのに、今や高校卒業の時ですらまだ精神的自立が出来ていない子どもがいるとのことです。つまり大人びた口をきき、やることもませているのに、心は幼稚なのです。
青年期は前にも後ろにも拡大し、膨張しています。かつては一瞬の輝きであった青年期が、今や長い長い終わりのない時代となっているのです。青年期は、一O年をはるかに越え二O年近くにわたって続き、子ども時代を圧迫し、大人時代をも圧迫するようになり、人生における大きな位置を占めるようになりました。この青年期の膨張こそが、ボーダーレスの時代を生む原因となっているのです。
大人でもない子どもでもない、社会的責任がなく、混沌が支配している世代がボーダーレスの中心にいるのです。このことが、子どもの飲酒を増加している原因の一つです。

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