子どもの飲酒にブレーキをかける力

広まりつつある運動
子どもに、もっと飲めもっと飲めと刺激を与え続けている情報の洪水に対して、子どもがリスクの高い飲酒をしている現実に対して、子どもの飲酒は危険だ、という情報を流し続けることが必要です。
一九八0年代からASK(アルコール問題市民協会・株式会社アスク・ヒューマン・ケア)は、子どもの飲酒や自動販売機やテレビ・コマーシャルに対してキャンペーンを続けてきました。それはASKが調査を行い、その結果を発表し、機関誌『アルコールシンドローム』に載せ、厚生省に陳情し、シンポジュームを開くなどの活動でした。その活動はささやかでしたが、未成年者の飲酒問題について、先駆的な問題提起をしたことに大きな意味がありました。
私も未成年者の飲酒問題について調査を続けながら、データがまとまるたびに発表する方法をとってきました。調査結果は、調査に協力してもらった学校関係者、学会などの専門家に報告し、またマスコミにも取り上げられました。私の調査が引き金になり、全国の学校関係者やマスコミ関係者から、調査結果の問い合わせが殺到しました。そしてさまざまな学校現場での調査が行われ、それが教師や生徒や親達に伝えられていきました。こうして、調査をしてその結果を伝えていくことが、未成年者の飲酒問題に対する世間の見方を変えつつあります。

国立久里浜病院「アルコール関連問題予防センター」の活動
私の勤務する国立療養所久里浜病院には、数年前から教育関係者からのアルコール問題や未成年者のアルコール問題についての研修のための見学申し込みが、年に何件もあって応対に追われています。教師集団への未成年者の飲酒問題についての講演や、高校生への講演や、PTAの親達への講演の申し込みも後を絶ちません。あるいは、文化祭のテ17研究の勉強のために、病院見学に来る高校生達もいます。
PTAの親達も病院見学に来て、高校生の飲酒問題の勉強をし、PTAの広報紙で取り上げる動きも始まっています。東京都公立高等学校PTA連合会では、子どもの飲酒防止のために、親自身がお酒の自動販売機を使わない運動を始めることを決議しました。キャッチフレーズは、「飲まない、買わない、飲ませない」。ポスターも出来上がっています(一九九四年五月二五日「毎日新聞」夕刊)(写真二四七頁)。
国立療養所久里浜病院には、アルコール関連問題予防センターという小さいながらもアルコール問題の予防についての仕事をしている部局があり、同僚の樋口医長が中心になって活動しています。予防センターは、月に一回アルコール問題予防研究会を聞いており、そこでも学校関係者や保健婦さんなどが集まり、未成年者のアルコール問題の予防についてさまざまな経験交流を行っています。一九九四年(平成六年)秋には、予防センターが中心となって、「若者による若者の飲酒を考えるフォーラム」を横浜で開催し、高校生の演劇部によるパフォーマンスや、高校生、大学生、教師、親、専門家などによるパネルディスカッションを行い、大勢の関係者が集まりました。

「イッキ飲み防止連絡協議会」・酒造業界・マスコミの動き
一九九一年一O月、一人の大学一年生が、クラブコンパの席でのイッキ飲みによる急性アルコール中毒で死亡しました。その大学生の父親である加来仁氏は、最愛の息子を亡くした深い悲しみと憤りから「イッキ飲み防止連絡協議会」を作り、全国の大学やマスコミにイッキ飲み防止や急性アルコール中毒の危険性やアルコール教育の必要性を訴え続けています。このような急性アルコール中毒による犠牲者の家族の訴えは、切実な声として多くの人々の共感を呼んでいます。神奈川県立追浜高校のPTA広報紙に掲載された加来氏のアピールを、ここにも引用しました(二四四頁)。「イッキ飲み防止連絡協議会」の活動に大学生協連も協賛し、イッキ飲み防止のポスターやチラシの配布に、協力する活動を始めたりしています(一九九四年三月三一日「朝日新聞」)。
酒造メーカーにおいても、たくさん売れればよいという姿勢から少し変化が出てきています。サントリーではARP(Alcohol Related Problem-アルコール関連問題)委員会を作り、お酒の飲み過ぎへの注意を呼びかける新聞広告を出したり、アルコール問題予防研究会に出席したりの活動を始めており、キリンビールでは、イッキ飲み防止のための教材のビデオを全国の学校に無料で配布したりの活動をしています。
こうしたさまざまの活動の結果、マスコミも未成年者の飲酒問題に敏感となり、未成年者の飲酒をめぐるさまざまの問題を前向きに取り上げるようになりました。マスコミの論調も、数年前の珍しいことを取り上げるという姿勢から、未成年者の飲酒は危険だという論調に変わりつつあります。
未成年者の飲酒をやめさせようという活動は、まだ緒についたばかりです。前記のさまざまの活動は、未成年者の飲酒をなくしていくための、市民運動ととらえることが出来ます。こうした力が未成年者の飲酒は危険であり、子どもの飲酒は健康へのリスクになるという、社会の常識を作り出していくのだと考えます。

*緊急アピール 息子の死をむだにしないで!加来仁

一息子は中央大学一年生でした。身長一八一側、体-重七三はで、スキークラブに所属、負けん気が強くまっすくな性格でした。
その夜、東大の寮で東京地区六大学のスキークラブのコンパが行われました。寮の廊下で乾杯し、一年生は先輩たちの部屋をあいさつに回りました。最後に幹部の部屋に行き、友人によれば、日本酒四、五杯とウイスキー四、五杯にあたる量を飲んだとか。先輩や女子生徒がはやしたてるなか、イッキ飲みもあったといいます。立ち上がろうとしてその場にひっくり返り、トイレで吐き、いびきをかいて寝てしまいました。
翌朝になって、ゆさぶって起こしても起きないので、先輩たちが相談の末、部のワゴン車で救急病院に運びこんだ時にはすでに息がなかったのです。
なぜ一刻も早く救急車を呼ばなかったのか、適切な処置をしていれば助かった命ではなかったかと何度口惜しく思ったか知れません。

事が大きくなるのを恐れてためらったこともありましょう。しかし、それ以上に、若者たちが大量飲酒の危険について無知だったこと、「起こしても起きない状態」が命にかかわる危険な状態だとの認識がなかったことが原因ではなかったでしょうか。
病院に運ぶことにしたのも、「授業に二日酔いではかわいそう」と考えたからだというのです。まさに死につつあった息子を前にしてのこのおそまっさに、寒々した思いがします。
事件の後、医学書を調べて、アルコールに「致死量」があることを知り傍然としました。普通の人がウイスキー五OOα以上を一度に飲むと致死量になりうるとありました。
酒のあふれる社会で長年生きてきた私がこんなことも知らずにいたとは。.どうかみなさん。多量のアルコールのイッキ飲みが自殺行為であることを、あなたのまわりの一人で一も多くの方に伝えて下さい。

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